Leanな生活について考えるブログ

「LeanStartUp」や「デザイン思考」や「UX」な考え方についていろいろ考えたり、日々の生活で実践したり。

図解 ビジネスの特徴で選ぶ 6つのUXデザイン手法

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UI/UXという言葉が流行して、もう結構たちますね。バズワードだ、なんていわれながらもしぶとく巷で、UXを向上するためには、なんて記事がかかれ結構なアクセスを稼いでいるようです。

じゃあ、自分も仕事でやってみよう!と思うと、これが結構大変です。何が大変て、UX手法の「宗派」のようなものがめっちゃ多い。いや、宗派なんていってしまいましたが、まぁ技術系の業界では昔からそれこそ宗教戦争のような、手法の対決は繰り返し行われてきたので普通の話ではあります。

手法の粒度を問わずに書き出してみると、UCD、HCD、人間中心設計、AgileUX、LeanUX、Lean Start Up、顧客開発モデル、デザイン思考、ビジネスエスノグラフィー…。さらにそれぞれの手法で明確に定義されたものは少ないため、それぞれのエヴァンジェリスト達が独自に微妙に異なる解釈で少しずつ変更している亜流な手法もあります。また、ここに広告系の人たちのマーケティング的な手法も同じ領域を改善する手法としてまじってきたりします。

私も学び始めた当初、ちょっと迷いました。いろんなひとがおなじようなことをいっているようで、なんかちょっとずつ違う。まぁ別に自分の仕事に役立てばなんでもいいんだけど、どのやり方でいけば一番自分にあってるのかな・・・。

今回のエントリーでは、そういう手法を、検討しているビジネスの種類という視点から整理していみました。2つの重要な視点があります。あなたのビジネスは、ターゲットユーザーがどれぐらいみえていないか、市場はどれだけ不安定か。

ビジネスのターゲットとトレンドの不確定性で整理する。

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ターゲットユーザーのことが見えやすい市場か?(縦の軸)

どれぐらい、あなたはユーザーのことを理解していますか?理解していると言い切れますか?

図の縦の軸に注目してください。Uncertain Target か Certain Targetか。

例えば、それがもう日本で何十年も前から使われているような、いわゆるCommodityといわれる商品であれば、必ずしもUX Designを強調するようなフレームワークは使わず、むしろマーケティングを意識したほうがいいでしょう。

しかし、いままでにない新しいビジネスであったり、また既存からあるビジネスであっても、あなた自身がそのビジネスに不勉強である場合は、UX Designを長期間にわたって慎重に行うようなフレームワークがいいでしょう。

市場や競合の動きが予測できるか?(横の軸)

 あなたは、あなたのビジネスで近い未来の市場の変化、競合の変化を予測できますか?

図の横の軸に注目してください。もし、あなたのビジネスの市場が十分に成長しており、年間をとおしてだいたいの競合の動きなども予測できるのであれば、「Certain Trend」なビジネスであり、「リリース前に戦略を検討する」フレームワークを選ぶべきです。

一方で、ビジネスを立ち上げたばかりで、競合がどういう動きをするのかわからない、新しい市場を開拓したため、そもそもどう市場が成長していくかわからない、というような「Uncertain Trend」なビジネスであれば、「リリース後に戦略を検討する」フレームワークを選ぶほうがいいでしょう。

 実際の制作プロセスで整理する。

このような2軸でフレームワークを整理すると、大きく分けると4つ、細かくわけると6つの手法が見えてきます。それを1つずつ簡単にご紹介していきます。

Certain Trendなフレームワーク

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マーケティング重視 型 (ターゲット 確定:トレンド 確定)

マーケティング重視型は、いわゆる大企業で普通に行われているもっともベーシックなプロセスだと思います。

長期的にビジネス戦略を考え、ユーザーニーズなどはアンケートやグループインタビューでおいつつ、あまり重視しないというような。もし、やろうとしているビジネスが、古くからあり、あまり競合との競争も激しく内容な業界であればこの手法でも問題はないはずです。問題ないというか、むしろ成熟している市場だからこそ、細かい差異が重要になり、また、マスマーケティングなどの物量作戦が功を奏します。ただ、本当にそういいうすべてが確定している業界なのかどうかは慎重に考えるべきです。

長期 UCD 型 (ターゲット 不確定 大:トレンド 確定)

長期UCD型は、こちらもいわゆる大企業が、なるほどUXというものがはやってるのか、じゃあやるかーといったときに取り組むときになりがちなプロセスです。

UCDとはUser Centered Designの略です。HCDと呼ばれる手法とほぼ同じであり、日本語に翻訳すると人間中心設計ともいわれます。UXをデザインする際の基本的なやり方で、ISOで定義もされています。

参考:http://www.usablog.jp/2011/06/iso9241-210.html

長期UCD型はそのUCDを最初に一度だけ長期に慎重に行うやり方です。マーケティングなどの戦略も考えつつ、それと同じかそれ以上にユーザー調査やペルソナ設計などを専門的なUXデザインの会社と組んでやる。このタイプは、やろうとしているビジネスのユーザーニーズが本当に全くわからなく、慎重にやるべき場合には絶対に採用すべきプロセスです。ただ、本当にそんなにユーザーのことを理解してないのかということは、調査前に考えてみるべきかもしれません。例えばある程度、こーゆーかんじなんじゃないかとプロジェクトメンバー、特に開発がみんな何かしら思っているようなプロジェクトだと、調査をがっつりやっても、開発にはいったときに、「いやーべつにそんなことやんなくてもだいたいわかるんじゃねーの」という感じで、調査内容をないがしろにされたりして、結局せっかくやった調査が水の泡となったりします。

大企業だと、とにかくプロジェクトやる!となると大きいお金がつきがちなので、実態にあわずこういう感じになりがちかもしれません。そして、大きいお金がついて、開発とのやりとりがうまくいかず失敗した場合「UCDはだめじゃないか」という話になってしまう危険性をひめています・・・。

スパイラル UCD 型 (ターゲット 不確定 中:トレンド 確定)

スパイラルUCD型は、なんかかっこよさげな名前をつけていますが、別にこういう名前のUCD手法があるわけではなく、私が勝手に命名しています。要は、一気にUCDをやるのではなく、短い時間での調査を反復して行うというプロセスです。

実作業としては、WEB開発を例にすると、ビジネス側の戦略ができた段階でモックアップを作り、その調査を社内で小さくやる。そこで得た気付きを、今度はもうすこし細かい画面設計書におとしこみ、また社内調査をやる。次はデザインで・・・。というような形で少しずつ完成形に近づけていくのです。リーンスタートアップ的な手法ともいえます。

参考:http://u-note.me/note/47487301

MVPを何度も作る感じです。ただ、ここであげている手法は、リーンとは違い、途中段階のものを実際に市場にだすということはありません。あくまでも、通常のウォーターフォール的な開発プロセスにフィットする形で、少しずつやっていく感じです。

この手法のメリットは、ウォーターフォールでまわっているような大企業にも導入しやすく、また開発との軋轢も比較的うまないというところです。デメリットとしては、途中段階の大幅な仕様変更は難しいので比較的UCDの成果としてはボタンの大きさや位置の変更など小さい改善にとどまりがちであったりします。また、実際にリリースしたあとにはUCDプロセスはまわさないので、本当に市場動向が確定しているような市場でなかった場合は厳しいことになるでしょう。

Uncertain Trendなフレームワーク

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アジャイル開発 型 (ターゲット 確定 : トレンド 不確定)

アジャイル開発型はその名の通り、アジャイル開発であることが主軸になったプロセスです。

一定の期間で、小さく完成形をつくりあげ、リリースをこまめにしていきます。本当に市場にリリースするかはプロジェクトによって異なりますが、WEBサービスなどでは、実際にお客さんに公開し、反応をみながら要件を追加変更し、少しずついいものにしあげていきます。こういったお客さんの反応をみながら開発をしていくということはUXデザインの考え方に近いものがありますが、開発手動のアジャイル開発手法では、リリースした後の反応はアクセス解析やABテストがメインで、UCD手法などは用いられないことが多いです。

こうしたやり方は、ユーザーがなにをもとめているかは熟知している、しかし、競合がどう動くかわからない、どう市場が成長するかわからないというようなビジネスにおいては、状況にすばやく適応するという点においてふさわしいといえます。しかし、本当にユーザーのことを理解していなければ、毎回ABテストやアクセス解析の結果にふりまわされ、どう要件を変えていけばいいのかわからないということになりかねません。

UCD + アジャイル 型 (ターゲット 不確定 大 :トレンド 不確定)

UCD+アジャイル型は、その名の通りアジャイル開発手法にUCD手法をとりいれたものです。

よくあるパターンはアジャイル開発をやっている会社で、一回アジャイルだけでやってみたものの、デザインやユーザビリティなどに問題をかかえてしまったので、UCD手法をやってみよう!といって、専門家などをやといやってみた、といような話です。一度要件定義の段階でUCDをしっかりと行い、スプリントをまわす段階では、UCDの結果をもとに開発チームにデザインの指示を行います。スプリントのたびに、UCDをやりなおすわけではないことに注意です。

長期UCD型と同じように、ユーザーニーズがさっぱりわからないプロジェクトでは効果をはっきしますが、やはり長期の調査結果はチーム全体に結果を共有するのが困難で、うまくいかない可能性もあります。また、派生系として、デザイン思考とよばれる手法にも近いやり方になります。初期のインスピレーションの段階で何度もUCDプロセスをまわし、ユーザーへの深い洞察を行い、革新的なサービスを創りだそうとするときは、この手法が望ましいです。

アジャイル UX 型 (ターゲット 不確定 中:トレンド 不確定)

アジャイルUX型は、UCD+アジャイルと言葉は似ているのですが、異なります。アジャイル開発にUCDを加えたものという意味では同じなのですが、UCDプロセス自体もリリースをする度に、こまめに小さく行うという点が異なります。いわゆるリーンスタータップの手法にもっとも近いやりかたです。

スパイラルUCDともにていますが、スパイラルUCDとの違いは、リリースする前にプロトタイプを改善することに重きをおくか、リリース後に実際の製品を市場に投入しながら改善することに重きをおくかの違いで、その違いは市場の動きが予測できるか、できないかの違いで選択すべきです。

長期的なUCDを行うわけではないので、ユーザーのニーズを深く把握できるわけではないのですが、そこはビジネス側の最初のインスピレーションですでになんとなくは見えているというようなスタートアップに向いているやり方です。また、大企業でも、新規ビジネスの立ち上げにおいて長期のUCDをやる予算がない、しかしリリースしながら少しずつ改善したい、というようなプロジェクトではコストパフォーマンス的にもおすすめのやり方です。

参考:http://enterprisezine.jp/iti/detail/2880

まとめ

で、結局どういう形が一番いいの、といわれると、マーケティングもUCDも最初の段階で完璧に行い、ウォーターフォール並の慎重な開発をアジャイル並みの素早さで行い、しかもUCDプロセスもしっかりやりながら開発を行い、リリースする度に反省し、改善していくという話になります。なります、というかまぁ無理です。なぜならば、与えられるリソースには限りがあります。それをどこに注力するのかは、ビジネスの状況によってメリット・デメリットが存在し、適切に選ぶべできはないでしょうか。

最後に、今回紹介した手法は、実際に私が現場でえられた経験を元に、独断と偏見で語ったものでして、若干学問的には用語の使い方があまりふさわしくなかったり、曖昧な定義の言葉をつかっている部分があります。こういった手法は、今まさに現場で進化していっているところであるため、そういう部分には少し目をつぶっていただき、言葉はさておき自分の仕事でつかえないかという視点で読んでいただけると幸いです。