シーン22 「ザネリの夏」再公演
○ ビデオ
西島「俺は自分のことをザネリだとおもってます」
○ 家
机の上には、かきかけのノート
永大模試の受験票
○ ホーム
雄一がまっている
○ 道
ゆうが歩いている
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
西島「カンパネルラみたいに、自分を犠牲にして命を救ったり、ジョバンニみたいに、人を心の底から信じたり、そんなことは、とても、できない」
西島「昔、親友が二人いました」
○ 劇
彰夫が座っている
周りを見渡す
ちらほら学生がいる
○ 電車の中
小学生がすわってる
おばあさんがいる
中学生がこれみよがしにせきをゆずる
なにも反応しない雄一
空を見上げる
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
西島「僕は転校生でした。友人もいなかった。でも、近所の男の子と、女の子とすごく仲良くなって。二人は受け入れてくれた」
西島「その女の子が好きでした。でも彼女が見ていたのは、もう一人の男の子。二人の間に僕は入ることができなかった」
○ 学校の前
ゆうが体育館にたどり着く
時計をみる
生徒たちが体育館に次々入っていく
○ 劇がひらく
ぱちぱちぱちぱち
ザネリ「らっこの毛皮がもうすぐくるよ!」
ジョバンニ「・・・」
○ 電車をおりた改札口
中学生がたばこをすっている学生に注意をしはじめる
学生に逆にからまれはじめる中学生
学生になぐられはじめる中学生
そのまえでたっている雄一
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
西島「男の子にあらゆる勝負を挑み、勝利を続けました。努力してきました」
西島「まけられませんでした。俺のほうがすごいということを女の子にみせつけるために」
○ 橋の上
学生が中学生になんか指示をあたえる
中学生が泣きながら、まんがをうっているおじさんのところに近づいていく
けるなぐるはじめる
おじさんがやめてくれという
けるなぐるをやめない
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
西島「勝ち続けた、時には汚い手もつかった」
西島「でも、振り向いてくれなかった」
西島「俺には何かがかけていた。あいつには何かがあった。そこで決定的に負けていると思った」
○ 学校の前
ゆうがまってる
○ 橋
で、学生がもういいぞ、といってもどさせる
また中学生がもどってくる
そのとき
おじさんがきれる
中学生をつかんで
川に放り込む
雄一「あ」
○ 学校の前
ゆうが彰夫にあう
すこしはなす
さきはいってますね、という
ゆう、まだまっている
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
西島「ただ、わからなかった。その何かが何なのか」
西島「俺は心のそこから嫉妬していた」
西島「そして、そう思えば思うほど、傷つけた…」
○ 橋の上
まわりがさわぎはじめる
学生がおろおろしている
おじさんは興奮でさけんでいる
雄一がたちすくんでいる
○ 劇
劇が開場する
彰夫が女の子と見ている
ザネリがおぼれているシーンから始まる
○ 橋の上
突然雄一
はしりだして、
橋をとびこして
川へ飛び込む
雄一「あああああ!」
落ちていく
橋の上に西島がいる
西島が笑っている
雄一も笑う
ザボン
○ 劇
カンパネルラが飛び込んで岸のほうにザネリを押しやっている
○ ビデオ
ビデオが流れている。ノイズが激しい。
ビデオが砂嵐になる
○ 橋の上
ざわざわいっている
橋の下では中学生が助かっている
救急車が来る
○ 劇
博士がおろおろしている
ジョバンニがどうでしょう、とこえをかけている
博士「もう無理です。おちて45分たちましたから」
○ 橋の上
ざわざわしている
○ 劇
男の声「ザネリを助けてカンパネルラはその小さき命をおとす
この物語はここからはじまる
ジョバンニとザネリ、残されたものたちの物語です」
○ 学校の前
ゆうが待っている